コラム:カンブリア・ビッグバン

 カンブリア大爆発とも呼ばれます。先カンブリア紀の終わり(約6億年前)に最初の多細胞生物があらわれ(異論もあるが)、カンブリア紀(5億数千億年前)の1000万年という地球史からみて極めて短い間に突如として、今日見られる生物の「」が出そろった現象をさします。「門」とは生物分類の階級の一つで、扁形動物門、節足動物門などと使います。そして、このカンブリア紀の爆発以降に進化したとみられる動物の門はたった一つといわれ(苔虫動物門)、地球の仲間は、このカンブリア紀に一気にそろったようなのです。地球は、30億年もの長い年月を単細胞生物、ラン藻などの微生物、約9億年前からはカイメンの祖先も加わり、これらの生物と共に暮らす星であったのが、突然6億年ほど前になって高等な基本体制をもつ生物が棲むようになったことが明らかになりました。
 このことは、地球史46億年を1年に見立てると、11月の下旬になった頃に、多細胞生物が突如出そろうといった様に見えます。一方、2億5000万年前に起きたペルム紀の絶滅の時は既存種の90%が死に絶え、生きのびた種にとって「進化の新天地」が開けたはずなのですが、その際には、新しい「門」が進化することはありませんでした。
 動物のボディ・プランのほとんどがカンブリア紀に一気に完成したのでありこの原因はいまだ不明といえるでしょう。
 こうした生物の躍進が、共生説や隕石などを第一原因として
なされていることを冷静に見れば、大進化は、漸進的な自然選択では説明がつかないように見えます。ガラパゴス諸島(;フィンチ類の分化)や、東アフリカのビクトリア湖(;シクリッド類(カワスズメ科の魚)の分化)のような隔離された、地球から見れば針の先の時空間で起きたことでもって、地球生命史を読み解くには無理があるのではないでしょうか。

 生命史はこのように突然の変容をみせ、なにがしかの莫大なエネルギーの流入を考えざるを得ないと思います。約6億年ほど前に一体何が起こったのでしょうか。漸進説では説明のつかないのが、巨視的な地球の進化の実状のようです。進化論を認めようとはしなかったキュビエの、「なぜ現在と過去の間をつなぐ中間的な種が見つからないのか。」という問いかけもうなずける部分があるのです。S.J.グールドの断続平衡説(区切り平行説)も、今西仮説も、進化は漸進説ではなく、非線形に飛躍することを示している。
 進化における、飛躍の原因究明は、次世代の進化思想に不可欠な課題です。


『日経サイエンス 別冊146号』 p80 に宮田隆氏の「遺伝子はどのように多様な生物をつくったのか」という章があります(参考HP1HP2)。カンブリア爆発に関して、遺伝子からみた多様性獲得の経緯など興味深い研究がされており、形態の多様化の3億年ほど前に、遺伝子のレベルではビッグバンの準備を終えていたということです。遺伝子のレベルにおいても、変異は徐々に起きてきたのではなく、短い期間に一気に変わったようです。

(今西学の未来)
 (自己組織化)

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