はじめに
 

 NHKアインシュタイン・ロマンの最終回だったと思います。アインシュタインが晩年中国を訪れたとき、一人の子供に尋ねたそうです。--石はなぜ下に落ちるの?--

 子供は、--石は下に落ちたがっているんだよ--と答えました。アインシュタインは笑いながら、地球が石を引っ張っているんだ、と教えると、子供はしばらく考えて、--そうかもしれない、地球が石を引っ張りたかったんだ--といったので、アインシュタインはすべてが判ったようになったという(創作)エピソードだったと思います。

 この子供の考えたことは真実です。ただ産業革命を起こす力は持っていないだけですね。

 1日24時間という相対時間が普遍的であると仮定した世界における科学ではないだけで、しかし真実であることが、アインシュタインにも了解できたのだと思います。

 科学とは、この世の中を知り便利な世の中にしていくための真理ではありますが、本当の真理の一部であるということを知る寛容さは大切なものと思います。



 今までに「今西錦司の世界」、「自然哲学の庵」を開設しました。

 そこで述べたかったことは、かなりの部分重なっています。今回もそう大きく変わらない内容かもしれません。

 繰り返し伝えたかったこととは、自然の奥にある目には見えない真実の科学の世界です。

 自然とか宇宙の中に流れる優しい旋律です。昔の人は、大自然の奥に恐怖、畏れを感じていたことでしょう。逆説的ですが文明のおかげで、すなわち自然を知に変え支配することによって(フランシス・ベーコン以降)、自然のかけがえのなさや優しさを知ることができました。

 そして、私たちが現在「暗闇で生命のない暗黒」と考えている宇宙も、いつか優しい慈愛と奇跡的な恩寵を含む法則で満ち満ちていることに気がつく時代が来るように思います。

 その時、豊かな心でもう一度自然を見回したとき、弱肉強食の生物世界もそのまま、かけがえのない生命を伝えて幾世代をくりかえす「うるわしき光の国、地球」の同朋達の世界であることを知るでしょう。


 人間に一つ必要なものがあるとしたら、「信仰」だと思います。普通に人生を送り、他者から疎外され、自己保存のままに生きるなら、つまり20世紀に多くの人がそう生きていたように生き続けるのなら上に述べた世界観、自然観は理解が難しいでしょう。

 「洗脳(brainwashed)」という言葉は、共産圏の指導者が唯物思想を人々に植え付けていく様子を見た、欧米人ジャーナリストによる命名と聞いています。この意味で、戦後共産主義に染まった人たちの教育指導によって、日本人は知らないうちに漠然たる「洗脳」を受けて育ちました。目に見えないものの価値を語らないことを常識として教えられてきました。

 しかし人生の途上で信仰に目覚め、人間が幾世代かけて伝えている情熱が何であるか気づいたとき、全ての生き物も万物の霊長である人間を支えている愛であることを知ります。
 こうした経験なくして、この文を読んだら傲慢な文章に誤解されるかもしれません。でも人が自らに与えられた使命を知り真理を伝えるからこそ、生き物達もこの世界に憩っているのです。

 この心境で自然界を眺め、心に映る世界をつづってゆきましょう。

 自然の奥にある美しい法則を、数学の言葉で根気よくあらわしたニュートンやアインシュタイン。
 あなた方を尊敬するとともに、その才能の千万分の1にも満たない私は、美しい調べを今はつたない詩で書き留めてこのサイトに上梓することにします。
 いずれ同じ思いの方が数学的言語で科学の世界を豊かにしてくれることを祈りながら。

2001.11