コスモスの夢
 

 今日の夢のこと話していい。

 どんな夢?

 ずっとつづくような白い道のなかにいたんだ。それはあとから考えると自分が滑って前進していたか、道のほうが、僕を乗せて動いていたか、道の脇の部分が後ろに進んでいたか、とにかく動いていたみたいなんだ。

 真っ白の世界だから、わからなかったのね。
 

 そう音も、風もなくて、その時は無意識だったのかもしれない・・。空中を浮いている感じ・・。
 で、ふと意識がわき起こったのは、脇にピンクの花があったからなんだけど、すぐ後ろに流れて消えてしまった。

何の花だったの。

 コスモスだった。それはすぐ近くを通ったわけじゃなかったんだけど、意識を向けるとよく知っているコスモスの花だった。「あ、コスモス」っておもった。

それから?

 それからずっとやっぱり、白い風景の中にいたみたい、進んでいたのかも知れないし、さっきのことも忘れてまた浮いている状態だった。意識はなかったのかな。

 ・・・。

 そしたらね。またピンクの花が流れてきたんだ。

 また、コスモス?

 そう!でもそれがね、最初意識を向けたときは、さっき見たこともわすれて、全くさっきと同じように「あ、コスモス」って思っただけなんだ。

 時間が戻ったようなかんじ。

 そう、もしそれが寸分違わずさっきのコスモスで、僕もそう思っていたら永劫回帰の世界に入っていたと思うよ。だけどね。すこし違ったんだよ!!

 何が?

 う〜ん、それが何が違っていたのかまではわからないんだ。花びらの枚数か、雄しべの数か、花びらのめくれ具合か、とにかく、さっきのと違うんだ。
 それでね、あ、時間が経ったんだ!って気づいたんだ。

 コスモスが流れているのを見て気づかなかったの。

 すぐ消えた感じだったからね。それで二度目のコスモスを見たときも、前のと同じであったらやっぱり、時間が流れていたことに気づけなかった。単に最初に見たときと同じ感情が動いただけで、何度同じものが流れてきてもその繰り返しだったと思う。

 でも、次に流れてきたコスモスが違うものだったので時間に気づいたのね。

 そうなんだ。だけどね、次のものがコスモスと全く違うものが流れてきたらやっぱり時間が経っていたことがわからなかったかも知れないんだ。

 たとえば・・桜とか?

 う〜ん、植物じゃだめだな。そうだね、たとえばy=4x とか。

 なにそれ、文字が流れてくるの?

 いや.たとえばでさ、とにかく共通点のないようなものが流れてきても、また時間が流れていることは気づかなかったと思うんだ。

 わかったわ、同じであって同じではないものね。それで前に見た時と今との違いがはじめて気づけたのね。

 そうなんだ!さっきの意識と今の意識が同じでありつつどこか違うときに時間が生まれるんだ。
 たとえばね、季節だって循環しつつ、少しづつ違うからこそ時が経つことがわかるんだと思うんだよね。
 ずっと地球が太陽のまわりを回るだけで、私たちの成長も記憶も春でリセットされたらやっぱり時間はないよね。

 でもずっと季節が巡らず、ずっと季節が異なり続けても時間は気づかない。

 直線と円環の融合ってらせんていうわね。

 とにかく時間ってさ、同じで違う!って感じる意識がなくては、考えられないんじゃないかなー。その意識があってはじめて空間も時間も考えられると思うんだけど、どう?絶対的な時間なんてないんだよね。じゃあ意識だけで時間がわかるかって、やっぱり運動しているコスモスがなければわからなかったんだよね。でも意識とコスモスがまったく別のものであったら、認識することもそもそもできなかったし・・・・。

 そろそろ掃除機かけるから、そこどいて。

 (おしまい)